雨池は今日も雨だった - 北八ッ池巡りトレッキング Archive

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2009/8/1 05:30

2006年は南八ヶ岳2007年は鳳凰三山~早川尾根、そして昨年は白根三山
ここ数年、一人で高山帯を縦走することが夏のお楽しみとなっている。
今年は、自分史上初となる北アルプスを、少し長めにテント泊トレッキングする予定であった。しかし、天気が不安定なこと及びその他諸事情により、結局この計画は秋に延期することに決めた。
がしか~し、どこにも行かないっていうのもね~......、なんか口惜しいじゃないですか。
そこで、ワタクシ急遽考えました。まぁ、いつもの通り、たいした考えじゃないのだが。

この週末は、相変わらず曇り時々雨の予報。おそらく山沿いは、ほとんど雨になるだろう。であればですよ、あえて雨を楽しむ山歩きというのも、これはなんちゅうか、オトナの余裕とでも申しましょうか。オツなもんじゃございませんか。
山頂で展望が得られないというのは、誰がなんと言ってもぼくとしては許せない気分であるし、安全確保の最重要ポイントは天候だろう。そこで、山行ではつねに好天へと向かうタイミングを読んで出掛けることにしているし、今まではほぼ期待通りの結果を得ることが出来ている。そんなわけで、ひたすら雨の中を歩くという経験は、ほとんどしたことがない。しかし、3泊を超えるトレッキングともなれば、そうそう連日天気が安定するわけでもないだろう。
それに、鳳凰三山で体験した、霧雨に煙る樹林帯の鮮烈な美しさの記憶もある。
梅雨明け宣言した責任者出てこい~!!!とちゃぶ台ひっくり返したい気分の今日この頃、この機会に雨の山歩きを経験しておくのも、大人ハイカーならではの実にお洒落な計画であろう(なワケないか....)。
もっとも、雨の登山道をただ歩くだけでは、宗教的な修行か体育会系のシゴキのようである。宗教的な修行にも体育会系的な諸々にも、一生関わり合いになりたくない!と考えているワタクシ。
そこで、突然ヒラメキました。まぁ、例によって、たいしたヒラメキではないのだが。

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雨の北八ッ、樹林帯の中に点在する池を静かに巡り歩く文学的(??)トレッキング~!!!
大好きな八ヶ岳だが、麦草峠以北は、まだ歩いたことないしな。
コレだ、コレ!!!
決定~~~~!!!

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てなワケで、行ってまいりました、北八ッ池巡りトレッキング。
麦草峠~茶水池~茶臼山~縞枯山~七ツ池~北横岳~亀甲池双子池~双子池ヒュッテ(泊)~雨池~麦草峠

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今回のトレッキングにはもうひとつ目的があって、それは新しく購入したマックパック製「カスケード65」のテスト。
この製品に用いられている「AZTEC」という素材は、雨に強く、コーティングに頼らないため耐久性も高いという。
ウワサでは「レインカバーがいらない」と評されるほどなのだが、ホントかどうか実際に雨の山歩きで試してみたかったのだ。
今までのテント泊で使用してきたカリマーの「クーガー 70-95」は、大きな不満もなく、日帰りで愛用している「リッジ 30」とポケットの配置が同様で使いやすい。しかし、夏の山行にはちょっと大容量過ぎるのだ。
そこで、よりシンプルな構造で長期間の使用にも耐えられそう、且つチャイルドキャリアで背負い心地の良さに感心したmacpacを選択してみたという次第である。

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05:45

想定通り、雨粒はほとんど感じられないくらいの霧雨。
駐車場から車道を少し歩くと、麦草ヒュッテの対面に登山道の入り口がある。

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すぐに「茶水池」が見え、雨池方面との分岐となる。

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木道は楽なのだが、

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ここ最近の雨でぬかるんだトレイルは、やはり歩きにくい。

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それと、よく「急峻な南八ヶ岳に比べ、緩やかな山容の北八ヶ岳」みたいなことが言われるが、北八ッの登山道は大きな岩だらけで意外と難儀することが多いという印象がある。

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06:25

中小場と呼ばれる、本来であれば眺めの良い(であろう)地点に到着。
空は徐々に明るくなってきているが、展望はご覧の通り。

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先述の通り、ちょっとした耐雨テストという意味で、ザックカバーは持ってきていない。
シュラフなどどうしても濡れて欲しくないモノは、ポリ袋でくるんでいる。

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樹林の中ではよくわからなかったが、もう雨は降っていない。
それどころか、若干青空ものぞいているほどだ。

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一旦下った後、茶臼山への登りとなるのだが、かなりの急勾配で息が切れた。

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07:15

茶臼山(2384m)、到着。

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時折現れる立ち枯れ地帯を抜けて、縞枯山へ。

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07:50

途中、見晴台となる岩場があったので立ち寄ってみたのだが、空は明るいものの残念ながら下界は雲に覆われていた。

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もうそろそろ山頂だろう。

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ここまでの間、ほとんど花の類は観察出来なかったのだが、この付近ではゴゼンタチバナ(たぶん)、

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シナノオトギリ(たぶん)がたくさん咲いていた。

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甘露の誘惑に、

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虫たちも夢中のようだ。

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08:30

縞枯山(2403m)、到着。
標柱には2402mとあるが、手持ちの地形図では2403mとなっている。再測量の結果、訂正されたのだろう。

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山頂からの下りは、かなりの急斜面。

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白く立ち枯れた部分が、有名ないわゆる縞枯れ現象である。

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09:25

各方面への分岐となる、八丁平に到着。

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(近年はクマザサの侵入も激しいようだが...)気持ちの良い草原を進むと、

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縞枯山荘がある。
飲み物を頼み、デッキで少し休憩させてもらったが、なかなか雰囲気のある山小屋という印象だった。

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09:50

少し歩くと、ピタラス横岳ロープウェイの駅前に出る。

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したがって、この坪庭付近一帯は2200mを超える高山帯ながらも、一般観光地となっている。

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やがて横岳方面への分岐を過ぎると、人の姿もまばらになった。
しかし、横岳まではロープウェイ駅から片道1時間程度と近く、軽装で登る人も多いためか、トレイルはよく整備されていて歩きやすい。

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ハクサンシャクナゲ(たぶん)が、若干咲き残っていた。

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10:40

北横岳ヒュッテ、到着。

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小屋前のトレイルを少し下ると、七ツ池がある。
名前通りに七つの池があるらしいのだが、奥の方には入れないようになっている。

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11:25

横岳南峰(2472.5m)に到着。

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7m高いという北峰は、すぐ近くだ。

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11:30

横岳北峰(2480m)、到着。
本来ならば眺望に優れた山頂らしいのだが.......

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空は明るいものの、眺望は楽しめないし、そのうち天気も崩れそうなので、休憩はそこそこに亀甲池へと急な下りを急いだ。
やっぱり、山頂や稜線は快晴に限るね。

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たぶん、クロマメノキ。
美味しそう....なんとなくだけど。

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この北横岳から亀甲池へ向かう下りは、想像以上にキツかった。
茶臼山~縞枯山と縦走した後の急勾配は、かなり足腰にキたのだ。

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しかし、路傍で観察出来たヒカリゴケ(たぶん)の美しさに、たびたび救われた。

自身が発光しているわけではなく暗所に差し込む外からの光を反射しているため、写真撮るのがけっこう大変。カメラの位置と角度を工夫しないと、エメラルドグリーンの幻想的な燦めきが写真に収められないのだ。
どうせだったら三脚立ててじっくり撮影すれば良かったと、今更ながらちょっと後悔している。

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こういった岩の隙間とか、

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樹の根本などでひっそりと生活しているようです。

ちなみに、茶臼山への道中でも発見しました。

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13:00

やっとの思いで、亀甲池に到着した。
あ~~疲れた。。。

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微かな雷鳴と共に、突然雨が降り出し、水面がざわめいた。
この雨はやがて止んだが、いよいよ雲行きが怪しくなってきたので、ヘトヘトな身体に鞭打って、先を急ぐことにした。

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北八ッらしい鬱蒼とした森の小道だが、もはや楽しむ余裕はない。
樹林の中なのでよくわからないが、再び雨も降り出したようだ。

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14:00

双子池の雌池が見えてきた。
右の浜がキャンプサイトらしいが、これじゃあテント張れないなぁ.....
夜中に水没しそう。。。

やや雨も強くなってきたので、とりあえず受付場所である双子池ヒュッテのある雄池に向かった。
途中、トレイル沿いにも所々キャンプスペースがあり、いくつかテントも張られていた。
オートキャンプっぽい大荷物だったので驚いたのだが、後で聞いた山小屋のご主人の話ではボーイスカウトのサマーキャンプだとか。
3日間ずっと雨だったらしく、お気の毒である。

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14:20

双子池ヒュッテに到着。
もうクタクタだ。

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小屋の軒下に荷物を置いたまさにその瞬間、いきなりもの凄い土砂降りが始まった。
疲労した身体で歩いている途中でコレに遭遇していたら、心折れまくりだろう.....想像するとオソロシイほどだ。
山歩きをしているとよくあることだが、大袈裟ではなく「何かに守られている」という気分になる。

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「今日は混んでますか?」と聞いたら「ガラガラ....」とのことだったし、正直この雨の中テントを張る気力も残っていなかったので、あっさりと小屋泊まりに変更することにした。早くビールも飲みたかったし。
せっかく泊まるのだから、もちろん食事付きである。なんのためにここまで重い荷物担いできたの.....?という感じではありますが。

ぼく以外の宿泊者は、怪我人も出た上にこの土砂降りで足止めをくらい日帰りの予定を急遽変更したという8名くらいの中高年グループと、蓼科山から縦走してきたという年配のご夫婦のみ。
空いていたからだろう、個室を案内された。ラッキー!!!
窓からは雄池、雌池が望めるし、3~4名はゆったりできる畳敷き。布団も、かび臭いようなことはことはなくふかふかだった。山小屋としては、かなり快適な個室じゃないかな。

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ちなみに、本来泊まるはずの大部屋はこんな感じ。

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ちなみに、こちらは食堂。

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ちなみに、食堂の奥には乾燥室と歓談スペースがある。

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17:30

ちなみに、夕食はこんな感じ。
豚汁が美味しくて、何度もおかわりしました。
まぁ、今までの人生で、美味しくない豚汁に出会った経験はあまりないのだが。

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食後、雨も小降りになったようなので、雄池までお散歩。
キャンプの場合、飲用水はこの池の水を直接汲むことになるそうだ。煮沸しないでも飲めるという。

ちなみに、近くで汲んで運んできた湧き水も有料で購入出来るのだが、こちらは主人曰く「南北併せて八ヶ岳でもっとも美味しい水」とのこと。たしかに、美味しい水ではありました。

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ちなみに、陽が差すと水面の色が変わるそうなのだが、残念ながら今回はずっと深い緑色のままだった。

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ちなみに、こちらが双子池の伝説。

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2009/8/2 05:30

ちなみに、朝食はこんな感じ。
お味噌汁が美味しくて、何度もおかわりしました。
もしかしたら、水がよいのかしらん?

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06:50

4時頃には青空も見えていたのだが、そのうちに雨が降り出した。予報もよくない。まぁ、予定通りと言えば予定通りなのだが......
そろそろ出発することにしよう。

まずは、小屋裏の道を林道まで上ることになる。

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この付近は、サルオガセがあちこちにぶら下がっていた。

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雷が落ちた木?

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どれだかわかんねぇ~~~???

プレートが道の反対側を指しているので、どの木だかわからずにしばらく悩んでしまった。。。

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車両通行禁止の林道をしばらく歩くと、

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落石続発、チョー危険地帯に突入.....

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非常に眺めの良い場所なのだが、足早に通り抜けた。

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雨池峠との分岐を過ぎ、15分ほど歩くと雨池の入り口に着いた。
薄暗い踏み跡を下っていくと、やがて幽かに水の匂いが漂ってくる。

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08:10

あぁ、ここが雨池だ。

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池の静けさも、それをとりかこむ森のたたずまいも、すべて私の想像どおりだった。

山口耀久著 「北八ッ彷徨」収録「雨池」 より

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雨池は雨がつくった湖である。山の中にできた巨大な自然の水たまりである。つまりこの湖は、湖水を涵養する、沢という水源をもっていない。

山口耀久著 「北八ッ彷徨」収録「雨池」 より

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双子山と大岳のあいだの凹地に水をたたえた双子池は、秋、池のほとりの落葉松の黄葉が美しく、十月のなかごろには眼のさめるような豪奢な色彩を見せてくれるが、惜しいことに池の雰囲気に深みがたりない。
その点、白駒池と雨池は幽邃さでは申し分がないし、大きさからいっても理想的なものだ。

山口耀久著 「北八ッ彷徨」収録「北八ッ彷徨」 より

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山の湖というのは大きすぎてもおもしろくないし、小さすぎても物たりないのだが、この二つは両方とも湖岸の一周が散歩に手ごろなほどの大きさで、まのびした感じも、こせこせした感じもない。

山口耀久著 「北八ッ彷徨」収録「北八ッ彷徨」 より

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白駒池は水辺で見るよりも、高見石や「にゅう」から見おろした姿のほうが好きだが、雨池は池畔に立ってみないと、そのよさがわからない。白駒池は水辺にまでまわりの樹林が迫っているから、離れて見るといかにも森に抱かれた幽玄な湖の感じがするが、周囲の明るい雨池は稜線から見おろすとあまりに開放的で、山の湖の神秘な感じがほとんどない。そのかわり、岸辺に立って眺めた風景は雨池のほうがはるかにすぐれている。池畔の構図に変化があるだけでなく、静かで明るい池の雰囲気がじつにいいのだ。北八ッの湖としては、澄んだ湖面に森の憂愁をたたえた白駒池がふさわしいが、いまの私には、行くたびにきれいな童話の夢をそだててくれる雨池の晴朗さが、このうえなく好ましい。

山口耀久著 「北八ッ彷徨」収録「北八ッ彷徨」 より

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10:20

泥だらけになりながら麦草峠に戻り、麦草ヒュッテで「鹿肉のカレー」を食べてから北八ッを後にした。
「地獄谷」に寄らなかったのは、早く温泉にでも入ってサッパリしたいということもあったが、また今度訪れる口実とするためでもある。
そうそう、ザックの耐雨テストですが、まぁ合格点でした。背負い心地も良好。

山口耀久氏が嘆くように、以前は踏み跡すらもなかった雨池に至るルートには、今や立派な木道まで敷かれ、その環境と雰囲気はたしかに激変してしまったのかもしれない。
しかし、氏の愛した雨池の魅力は、もうどこかにすっかり消えてなくなってしまったのだろうか?

ぼくは、そうは思わない。
少なくても、そう信じたい。

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